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なぜ外国人は生ものが苦手なのか?答えは和食文化にあった!

「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことで、さらに世界中から注目されるようになった日本の食べ物。
しかし、私たちが当たり前のように食べているものの中には、外国人からすると「とんでもない…!」というものもあります。
特に、卵かけご飯やお刺身などの「生もの」に抵抗を覚える人が多いようです。
どうして日本では生ものを食べるようになったのでしょうか?
歴史とともに食文化の違いをご紹介します。
卵、魚…生ものを食べるのは日本だけ!?
海外で受け入れられなかった理由は?

卵や魚の生食は世界でも珍しく、日本特有の食文化といえます。
一方、海外で生食が普及しなかったのは、生の卵や魚には細菌や寄生虫がいる可能性があるからです。
食中毒のリスクがあるということから「生=危険」と考えられ、加熱するのが常識になったようです。
では、なぜ食中毒のリスクがあるにもかかわらず、日本では生食文化が発展したのでしょうか?
3つのキーワードからひもといていきましょう。
海に囲まれた島国
魚に限りますが、お刺身で食べるには鮮度が命です。
日本は海に囲まれているため、昔から新鮮な魚が豊富に手に入りました。
もし日本が内陸国だったら、お刺身は誕生しなかったと考えられます。
また、奈良時代になると仏教の影響から一部の肉食が禁止されたことや、土地が農耕に適していたため牧畜があまり発達しなかったことで、魚をよく食べるようになったとされています。
さらに、日本刀の優れた技術を生かし、切れ味のいい包丁が作られたこともお刺身が普及した一因と考えられています。
食の保存文化
海に囲まれているだけではなく、日本では鮮度が長持ちするよう、殺菌効果のあるわさびやしょうゆが生まれました。
わさびは飛鳥時代、しょうゆは室町時代から使われ始めたとされ、現在のようにお刺身やお寿司に使われるようになったのは江戸時代後期といわれています。
握り寿司が考案されたことで、江戸の町でブームが起こり、庶民の間に広まりました。
冷凍や冷蔵の設備がなかった時代、人々は経験からわさびやしょうゆが細菌やカビの増殖を抑え、食中毒の予防に役立つことを知っていたと考えられています。
世界一の衛生管理
現在、「日本の衛生管理は世界一」と評価されています。
そのゆえんは卵の安全管理にあり、海外と比べ食中毒の発生率がとても低いのです。
具体的には、徹底的に管理された清潔な施設内で、洗卵、乾燥、殺菌、検卵などの過程を経て無菌状態で出荷されます。
さらに、卵一つひとつに賞味期限のシールが貼られており、高い品質管理が行われています。
そもそも卵を食材として使うようになったのは江戸時代になってからですが、江戸時代の日本は世界でもっとも清潔な国でした。
ロンドンやパリなどヨーロッパの各都市は、窓からふん尿を投げ捨てており、とても不潔だったのに対し、日本は農家やくみ取り業者がふん尿を回収していました。
そのおかげで、日本では疫病がまん延することもありませんでした。
昔から清潔さを重んじる国だったからこそ、卵の衛生管理も世界一になったというわけです。
また、卵かけご飯を日本で初めて食べたのは、明治初期のジャーナリストであり事業家の岸田吟香(ぎんこう)といわれています。
彼が卵かけご飯のおいしさに気づき、周囲に勧めた結果、日本全国に広まったそうです。
外国人は生魚や生卵を食べても大丈夫?
実は日本以外にも生で食べる国があった!?

最近では日本食ブームもあり、日本以外でもお寿司やお刺身が食べられるようになってきましたが、外国人は生ものを食べても体に影響はないのでしょうか?
もともと生食の習慣がないので敬遠されがちですが、食物アレルギーがない場合、日本で販売されている新鮮な卵や魚であれば問題ないそうです。
卵の生食は魚ほど海外に普及していませんが、香港、シンガポール、台湾では日本から輸出された卵が販売されています。
ただし、衛生管理や品質管理が十分に整っていない国で生ものを食べるのは、注意したほうがいいでしょう。
ちなみに、海外にも生ものを食べる文化があります。
例えば、イタリアの「カルパッチョ」や韓国の「フェ」。
カルパッチョは、薄くスライスした生の魚介類をオリーブオイルやレモン汁などであえた料理です。
1950年にベネチアで考案され、もともとは生の牛ヒレ肉を薄切りにして、マヨネーズとマスタードを混ぜたソースをかけたものでした。
ちょうどそのとき画家のヴィットーレ・カルパッチョの回顧展が開かれており、赤と白のソースが彼の作品の特徴と一緒だったことから、「カルパッチョ」と名付けられたのだとか。
フェは日本のお刺身に似た食べ物で、朝鮮半島では古くから食べられており、韓国を代表する人気メニューです。
日本のお刺身との違いは、必ず生きた魚をさばくこと。
また、白身魚がメインで赤身の魚のお刺身はほとんどないそうです。
薬味は「サムジャン」や「チョジャン」と呼ばれる甘辛いソースのほか、しょうゆやわさびも使われているそうです!
韓国に行ったら、食べ比べしてみるのも面白そうですね。