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松下 奈緒 『旅と言葉』vol.2

音楽家でもある松下さんは、誰もが知っている作曲家ゆかりの地もたくさん旅してきました。
今回はその中で出会った人々との触れ合いや音楽でコミュニケーションをとる際に大切にしていることをお話してくれました。
※本インタビューはECC外語学院にて配布しておりますフリーマガジン『MeLeDi』vol.2に掲載しております。今後配布予定のvol.3でも松下奈緒さんのインタビューを掲載する予定です
インタビュー記事vol.1はコチラ
『MeLeDi』とは、言葉がもたらす出会い、学び、発見、そして未来を応援するマガジンです。
『旅と言葉』
好きな曲のことは英語で伝えられるよう準備をしています

―松下さんは音楽家でもあります。音楽家としての活動の中で音楽について海外の人と話すときには、コミュニケーションはどのようにとられていますか?
好きな音楽について話をするときなどは、「ラフマニノフのコンチェルトの何番のここが好き」などの会話を、ひととおり英語で言えるように準備をしておきます。そうした会話をしつつ、メロディーを口ずさんだり、一緒に楽器を奏でたりすると、言葉を交わすのと同じくらいコミュニケーションがとれる気がします。
また、音楽用語はイタリア語やドイツ語で書かれていることが多く、それは万国共通です。演奏についてなど、音楽的なコミュニケーションを取るときは英語で会話をしますが、フィーリングは音楽家同士だと自然と伝わることが多いんです。
―洋楽を聴くとき、松下さんはどうやって曲に対する理解を深めていくのですか?
メロディーや歌声に惹かれて聴くうちに好きになることが多いです。
そして、好きになった曲の歌詞を電子辞書や翻訳機などを使って調べます。作詞家が歌詞に込めた意味も理解すると、その曲をより深く理解できますからね。そうして調べることが英語の勉強にもなります。
個人的なおすすめはディズニーの曲の歌詞で、比較的分かりやすく、勉強するのにすごくいいと思います。
他には、ビートルズやカーペンターズの曲でもよく英語の勉強をしていました。特にカーペンターズは、メロディーもポップで子どもでも覚えやすく、「Sing」や「Yesterday Once More」をよく聴いていましたね。シンプルな中に口語表現もたくさんあります。これらの曲を聴くと、ボーカルのカレンの優しい歌声を聴きながら、辞書を片手に英語の勉強をしたことを思い出します。
音楽がきっかけで旅をした国もたくさんあるんですよ。
クラシックの作曲家ゆかりの地を巡る旅をしたときは、ショパンゆかりの地であるフランスのパリとスペインのマヨルカ島、メンデルスゾーンとリスト、モーツァルトはそれぞれの祖国であるドイツとハンガリー、オーストリアに行きました。
作曲家たちが生まれ育った土地を訪れて、彼らが生きた環境に触れて、時代背景を知ると、この場所だからこの曲が生まれたのだと感じることができます。旅の中でショパンやモーツァルト、リストが残した楽譜を特別に見せていただいたり、彼らのピアノを弾かせていただいたり、とても貴重な体験ができました。
実は、ショパンのピアノは、そうとは知らされずに弾いていたんです。
後になってそのことを聞いたときには、涙が出て手が震えました。
モーツァルトやリストのピアノも、それぞれの博物館に保管されているのですが、係員の方が熱心に説明をしてくださり、実際に弾かせていただけて感動しました。
旅先で現地の人と話すときは笑顔が大切です

―海外でコンサートにも行かれていますが、思い出深いコンサートはありますか?
アメリカのボストン・ポップス・オーケストラのクリスマスコンサートや、タングルウッド音楽祭が印象に残っていますね。
ボストン・ポップスのクリスマスコンサートは公演中に飲食ができるテーブル席もあって、家族で観に来ている人たちも多く、ステージにはサンタクロースも登場するんです。みんなが知っている有名な曲も演奏され、年齢を問わず本当に誰もが楽しめるコンサートでした。
タングルウッド音楽祭はマサチューセッツ州西部のレノックスで行われ、クラシック音楽祭が6月から7月に、ジャズフェスティバルが8月から9月に開催される、一大音楽イベントです。
私はクラシック音楽祭を見に行ったのですが、チェリストのヨーヨー・マさんの演奏を聴くことができました。オープンスペースの会場には座席もありますが、多くの人が芝生に椅子やテントを広げ、思い思いのスタイルで音楽を楽しんでいました。日本ではそのようなスタイルのコンサートに行った経験がなかったため、とても新鮮でした。
―音楽以外に興味を持って訪れたところはありますか?
アートが好きで、ニューヨークでは「MOMA(ニューヨーク近代美術館)」や「メトロポリタン美術館」など、有名な美術館にはほとんど行っていると思います。ブルックリンにある小さな美術館も自分で探して行きました。
また、撮影で行かせていただいたフランスの「オランジュリー美術館」では、モネの『睡蓮』を私以外誰もいない空間で見るという貴重な経験をさせていただきました。感動しながら鑑賞したことを覚えています。
―松下さんなりの旅の準備を教えていただけますか?
メジャーな美術館は場所も分かりやすいんですが、ちょっとマイナーだと分かりづらい場所にあることも多いんですよ。そのようなときは、事前の下調べを徹底的に行いますね。
ストリートの名前、駅の名前、会場の入り口などを調べて、それから行ったことのある人の体験談をネットで見るなどして、確認もします。迷ったら駅の係の人や、歩いている人に聞きます。
海外で現地の人に話しかけるときは、まず聞きたいことを頭の中でまとめて、笑顔で尋ねてみてください。きっと優しく教えてくれますよ。「Please tell me the way to~」など、簡単なフレーズを用意しておくとよいかもしれませんね。
海外に出掛けるときは、時間が限られていることが多いので貪欲になります(笑)。
行きたい場所がいくつもあるので、その場所の位置関係や、営業時間をリストアップします。そこから、電車や車での移動時間などを考慮して、どこから行くかなどのスケジュールを組むのが楽しいですよ。
前にNYへ行った際には、予定を詰め込みすぎて夜にはぐったりしてしまったこともあります(笑)。
―音楽がきっかけで英語や海外旅行に興味を持ち、ECCで学ぶ人も多そうです。そうした方々にアドバイスをいただけますか?
私自身、好きな作曲家を訪ねる旅では、いつも思ってもみなかった発見があり、驚かされることばかりです。
アーティストが歩いたかもしれない町並みを歩いてみたり、彼らの音楽が生まれたルーツを肌で感じたりすることは素晴らしい体験です。興味や好奇心を持ち、現地の言葉で会話を楽しむと、旅はもっと楽しくなるはずです。
Profile
1985年2月8日生まれ。大学在学中の2004年にドラマ『仔犬のワルツ』(日本テレビ系)で女優デビュー。女優業と並行し、ピアニスト、作曲家、歌手としても活躍。2020年1月から『日経スペシャル ガイアの夜明け 時代を生きろ!闘い続ける人たち』(テレビ東京系)の3代目案内人を務める。